やわらかい

日々、いろいろ、ほそぼそ

泥のように眠る話

f:id:maruiinochi:20221014231926j:image

 

こんなに日記を書く期間が開くとは思ってもみなかった。思ってもみなかったけれど、納得でもある。

理由はかなりシンプルで、自分の抱えている病気が悪化したということだ。睡眠障害と、不安障害。なんとなく、大丈夫ではないかも、と思うレーダーだけが、一度体調を崩してから理解できるようになり、やばいかも!と走り出したら、色んなことがゴロゴロと転がり出した。

職場とはタイミングよく面談の時期であり、早々に面談。病院への再予約。前にも提案されていた、一旦仕事を辞めて治療に専念して復帰する方向で話が進み、もう一度病院に行った。

薬を切り替えた前回から、合わないなと思っていたのだが、それが顕著になったことを伝えた。シン…となる診察室。ここ最近、通院でこうなることが多く、私は果たしてこの担当医と合っているんだろうか、と悩みの種でもあった。

担当医には休職を勧められた。仕事を辞めればこの症状は落ち着きます。と言われて、エ?!と思っていたら、でも仕事を辞めるって大きな決断でしょう?と言われ、そう……です…?となった。この時点で、私は仕事のことをなんだと思っているんだろうと思って、アレ!?と頭がエラーを起こした。

でももう、何かに期限がつくことが耐えられなかった。自分が毎日今の会社で働いている姿も想像がつかなくて、それよりも、また体がそれを拒否してしまったら?という怖さが勝ってしまった。

 

その日はよくわからないまま病院を出て、観たいものがあった私は場所を移動した。関西にいる大学の同期の友人に、用事があって連絡をしていたら電話がかかってきた。インザ無印良品。買おうと思っていたものを握って、うろうろと店内を歩きながら小一時間くらい話をした。

彼女はパートナーと同棲している。

このパートナーと結ばれるまで、彼女には色々とあったのだがその経緯もろもろを知っていることと、パートナーの人とも何度も顔を合わせている。近くにその彼がいるのかと聞くと、あっさりと電話が彼に代わった。

久しぶりやな、と言う彼に、久しぶりー!と返すと、そんな声が出るなら大丈夫そうやなあと笑われた。そしてすぐに間髪入れず、「仕事辞めて関西に帰っておいで」と言った。

無印良品のお店でタオルを物色していた私は、思いがけない言葉に大爆笑をしてしまった。多分、その時お店の中にいた人間の中でいちばん大きい声が出ていたと思う。そして、ちょっとだけ涙が出た。笑いすぎたということにしておきたかったけど、多分、違う。

その人が、私の求めている言葉を理解していたのか、そうじゃないのか。そんなことはどうでもよくて、ただ私にそう言ってくれる人たちがいるということに安心した。でも、少しだけ自分がずるい人間のようにも思えて、そうして安心してしまう自分がどうしようもなく甘えている人間で、困ったな、そんな気持ちもある。

 

そのあと、また一人友人に連絡をして話を聞いてもらうことにした。彼女は私にとって良き理解者で、冷静で、信頼のできる人だ。彼女は、良くないこと、間違っていると思うこと、そういうものに対して嘘をつかない人でいてくれる。

私の判断がどうなのか、わからなくなってしまった時ついつい頼ってしまうのだが、今回もゆっくりと話を聞いて、こうだと思う、という話話をしてくれた。

 

そして、家族への連絡。

母は肯定的で、何より驚いたのは私のやりたいことについての本心を見透かされていたことだった。色んなことは、後から考えればいい。でも、やりたいと思って心残りにしていることがあるんじゃないのか。そういう場所から離れない方がいいのではないか。親ってコエ〜と思った。

正直、実家に帰るのは大変な気もしているけれど、今はそうも言ってられないのが正直なところであったりする。今の職場には元気になったら戻ってきてくれていいよ、と言われているけれど、多分戻らないだろうなと思う。地元に帰って、それからを考えよう。ちなみに、関西地方で仕事を見つけることができたら、兄は私と同居してもいいと言っているらしい。

いや、懐〜。デカ〜。この歳になって妹と兄で〜!?と思ったけれど、兄は昔からそういう人だ。利害の一致。それから、私に対してはいつも味方であってくれること。

またちょっと泣きそうになった。本当に情けなくて、自分では自分を許せなくて、誰かに許されることでしか、自分を保てないこと。どうしてこんな人間なんだろう、と思うけれど、そうしてでしか、できない人間がいる。誰も悪くない。私も、誰かも、あなたも、すべての人が。

 

それからの私は、スイッチが切れたようにこんこんと眠ることと食べること、それだけを繰り返していた。泥のように眠り、優しい夢も見ない。ただ、息をして、生活をなんとかこなして、溶けるように布団の中にくるまっている。

 

会社とのやり取りはしなくてはならないことで、まだ確認しなければならないことも、また病院に行くことも、色々やらなくてはならないことがある。募る不安。でも、良い方向に向かっているよ、と友人は強く言う。

 

そうだといいな、と泣きたくなるような心地と、どこかで電気のスイッチを切った音が聞こえてくるようだった。電気はまだそっと灯る小さな光だが、真っ暗ではない。少しずつ、その光を明るくすることができたらいいと、今はまだ少しだけ暗い部屋にいる。