やわらかい

日々、いろいろ、ほそぼそ

私と骨と犬の話

f:id:maruiinochi:20230801140911j:image

 

やってきた。子犬が。

最初は先住犬とどうなるかとかと思ったが、今やワンプロをやるほどの仲の良さになっている。最初は先住犬が子犬を噛みやしないかとヒヤヒヤしながら見守っていた。先住犬は、兄弟もおらず一匹で捨てられていた子犬で、犬同士のコミュニケーションを知らない。そんな私の予想に反し、日に日に子犬に慣れ、気分にもよるのだろうが、子犬がもういいと言っても自分から絡みにいくほどである。

互いに目が合うと、メンチを切り合いそろそろと近づいては絡む。最早どこぞの輩のようなものだ。

 

子犬は朝が早い。

子育てをしている先輩や友人たちから聞く話とよく似ていて、食事の回数も多ければトイレの回数やタイミングも色々だ。失敗することもあるし、今!??!ご飯食べてるけど?!みたいな時に大慌てすることもある。

起床時間は基本朝の五時半。あまりの早さに絶句。最初の二日間は何があってもいいようにリビングで一緒に寝た。五時半ちょうどくらいに元気な子犬に鼻を噛まれて起きることとなった。

不眠症の私は最初の一週間が大変だった。ストレスも溜まり、思ったように眠れなかったり、子犬に合わせて生活するのが大変で、今まで子犬から飼っていたはずの経験は、犬の個性によって違っていると思い知らされる。

 

特に心にきたのは先住犬が子犬を構うあまり、私に対して拗ねてしまったことだ。

触ろうとするとウーッと唸られたり、手を甘噛みする様子を見せた。そんな中、飼うと決めたのは私で、世話係として昼夜面倒を見ていたのだが、母親に小言を言われて「ちゃんとやってるのに」と睡眠リズムが崩れて眠れていたこともあり、涙が出た。先住犬に嫌われそうになっても子犬の世話をしているのに。

母に何かを言われたことよりも、先住犬に嫌われかけていることが辛かった。人間に嫌われるよりも泣いた。私、やっぱり人間より動物か好きなんじゃん。

友人にその話をしたら、「情緒が育ってきてるね!」と言われて、まだこれ以上私の情緒には伸び代があるの?!と思わざるにはいられなかった。それ以降泣いたのは夜に犬たち二匹の寝顔を眺めている時だった。

 

愛おしいいきものたち。言葉も通じない、何度同じことを言っても言うことを聞いてくれるわけじゃない。ままならないし、子犬なんてよりいっそうそうだ。

でも保護犬だった子犬は、私が何か縁を感じて引き取らなければどうなっていたかもわからない。それは先住犬もそうだった。安らかで、無防備なお腹を出して眠る犬たちを暗い部屋で眺めていると、涙が出た。多分、これは愛おしさから。

 

子犬がやってきたことで生活が激変した。

私の生活は規則正しくなり、三食ちゃんと食べるようになり、犬の散歩も朝晩行く。気づいたら体重が安定した数字に戻っていた。アニマルセラピーってマジなんだ……

昼間は犬をリビングに放って、その傍らで原稿をする。お昼になれば彼女たちにご飯をあげて、自分も食べる。子犬は何をしでかすかわからない。ちなみに本を10冊近くダメにされている。マンガを噛んだらいよいよどうにかしてやろうと思っている。

 

お金はかかる。でも、かえがたいものを得たと思う。何かに責任を持ちたかった。自分の力で、自分の家族を作りたかったのかもしれない。人間は得意じゃない。好きだけど、苦手だ。動物の方が多分、好き。でも、営みから外れないでいたかった。

 

新しい子犬が来てから、他にもいろいろ後押しされることがあって、私は自分に骨と犬のタトゥーを刻むことにした。

私の愛してやまないいきもの。そして、犬といえばほねっこのイメージ。それから、彼らは私より早く骨になる。それはどうしても仕方のないことで、私に思いがけない何かが起きない限り覆されない理だ。灰になること、骨になること。必ず巡るもの。私にもいつか必ずその時がくる。

その時、私の記憶の中には何匹の犬がいるだろう。あなたたちと、可能なかぎり巡って、生活を営んで、その輪を眺め続けていたい。

 

とはいえ、長生きはしてほしい。

私も頑張るからさ。