やわらかい

日々、いろいろ、ほそぼそ

好きな言葉の話

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ものを書いたり、描いたり、作ったりしていると言葉について考える。

この状況や、人の心境をどう表すのが適しているのか、どういう言葉がそこにぴったりとはまるのか、選ぶときに自分の中にちゃんと真っ直ぐ落ちるような、そういう言葉を常に考えている。

それはこういう日記でも同じことで、読みやすさや心地よさ、なるべく棘がないように、と心がけていることの一つである。

 

棘がないように。

と、言っているが、時折人と話していてもぷすりと心臓に刺さる「柔らかい棘」のようなものがある。私個人の主観の話にはなるが、この「柔らかい棘」は私にとって大切にしていることだ。

一見すると、優しさや心のこもった言葉のように感じるそれは、なぜか頭から離れない瞬間がある。その意味をじっくりと咀嚼をしてみると、まるで喉に小さな小骨が刺さったような、最後には飲み込むことはできるのだが、どこかつっかえて引っかかっている違和感。

優しさは時に人の心に抜けない切先を突き刺すことがある。だから、「柔らかい棘」。日々に積み重なる、些細でいて、ある人にとっては瑣末であろうこと。この感覚を拾えるようにといつもアンテナを張っている。

 

当たり前のことなのだが、100%全てが欠けることのない人間というのはいない。あるていど、何かしらの欠けた部分があって、それを埋め合うように私は人と関わっている。基本的にないものねだりな私は、自分の持っていないピースを持っている人をいいな、と思うことが多い。

「欠ける」「埋める」

これも、私の好きな言葉だ。欠けていて当たり前の自分に、何かが入ってきた時、私は満たされた気持ちとどこか寂しい気持ちになる。この人が持っているものを、知ることや感じることはできても、決して同じものにはなれないと知っているからだ。それでも、欠けた部分には誰かの端っこが繋がれて、つぎはぎの布のように私の心は広がっていく。一枚の同じ布にはなれないけれど、一枚になったように見えるそれ。

そういったもので私の心はできているのだ。

 

対局にある言葉にも惹かれる。たとえば、「光」と「闇」だったり、「月」と「太陽」、同時にそれらが一つの場所に現れることはなく、交わらない平行線。でも、それらがなければ互いの存在が成り立たない。結局のところ、私は相反することが好きなのだと思う。理解できる、できない。「できない」が前提で、それでも「できる」ようになるために、試行錯誤する人の心が好きなのである。

もし、不可能と思っていたことが「できる」のであれば、それほど嬉しいことはないだろう。一人では難しくとも、誰かがいることで、ああ、大丈夫だったなと思えればいい。

 

「寂しい」という言葉も好きだ。

なんとなく、自分にとって寂しさは愛おしさの裏側にあるものだと考えている。何かや誰かを愛おしく思えば思うほど、寂しいの気持ちは、楽しかった日の最後に手を振って別れたあとにやってくる。そんな感じ。さみしいを素直に言える人を愛おしいと思うし、その人から最大限の好きをこめた気持ちの裏側を、ひっくり返して見せてもらっている気持ちになるのだ。

温度感、肌、ふれる。愛おしさと寂しさと、その時々によって感じ方の違うものたち。冷たかったのか、あたたかかったのか、大胆に手を伸ばしたのか、こわごわ指先を動かしたのか。その人の性格や所作が、気持ちにともなって変わっていく。ずっと同じものであることは難しい。変わらないように見えても、ゆっくりゆっくりと地球が回っているように、人も流動し続けている。

 

ついこの間、日本語って難しいよね、という話を友人とした。

何か一つを取っても、表現するための言葉がたくさんあって、その選び方一つでナイフのように鋭いものになったり、柔らかい布のようになったり、はたまた道端に転がるただの石のようになってしまったりもする。

 

そして、自分自身の心がいまどんな状況なのかによっても変化していく。

怒っていれば、傷つけるための言葉を準備するだろうし、悲しければその悲しさが伝わるだけのものを並べるだろうし、嬉しければ子どものようにはしゃいで、弾むような言葉を選ぶだろう。

自分の中で、それを表す最大値の言葉。それがどんなものなのか、どうしたらそれが人に伝わるだろうか。わかりにくいものを、わかりやすく誰にでも伝える言葉に置き換えることはできるのだろうか。

 

日記を書き始めたのは、自分に何か一つできることがあればいいと思っていたのと、自分の心の底に一枚板を敷いていて、その下にまだある「何か」についてを書けるような場所を作っておきたいという気持ちだった。

こうして始めてみると、好きなように書きながら、自分にとって心地良い言葉ってどういうものかを確かめる作業をしているのだなということにも気がついた。

 

好きな言葉。使いたい言葉。届けたい言葉。

別に、大仰なものでなくていいけれど、何気なく食べた魚の骨が、喉元をうまく過ぎていかなかったり、食べ終えれたはずなのに、お腹の中でもぞもぞするような気がしたり、そういう小さな違和感、自分の琴線に触れるものが、自分にとっても誰かにとってもあればいいな、と思う。

 

そんな私ですが、引っ越しを間近に控えて、ポケモンの最新作を購入してしまいました。

やめておけばよかったな…と思うほどゲームから離れられなくなっているので、後悔先に立たずとはまさにこのことか〜〜〜!!ガハハ!!とオタク大笑いです。

 

週末の話

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先週末、農家を始めた先輩の家に泊まりに行った。サークルの同窓会のためだったのだけれど、ついでに実家の荷物を片付けるのもかねて。

 

先輩の家は山の近くにあり、通い続けていた喫茶店を後にして行くと、街灯が一つもなく真っ暗で星が綺麗だった。夜十時には眠ってしまう農家の人。私が大学生の頃、色んな遊びを一緒にした人である。

大学生の頃、お願いすると何でもとりあえずしてくれる人だったので私はお腹が空いていて、ご飯食べたいよ〜とおねだりをすると、ありあわせのもので晩御飯を食べさせてくれた。野菜の全てが先輩の作った野菜。べらぼうに美味しかった。

先輩の家は薪ストーブもあって、薪ストーブを前に最近のあれこれ、共通の友人や知り合いのことを話したり、のんびりと過ごした。

薪ストーブはあたたかいのだけれど、とにかく家が寒い。

お風呂を沸かしてくれたのだが、お湯が熱いのか私の身体が冷えているのかわからなくて、熱…!寒…!つま先痛ッ…!だったし、布団は何枚も用意されて、かつ、分厚くて重くて、こんなにいる…?と言って、布団の中に入ったら私の形に盛り上がる形で閉じ込められた。寝返りをうったら、あったまっていない部分に足が触れて冷た!!!!!!!になった。これが正解ってことね…。

部屋は光が一つもなくて、電気を消したら何も見えなくなって私は笑ってしまった。暗闇で笑う私を、先輩は「何笑っとるん」とベッドの上から聞いてきて、いや、目が慣れないほどに暗いので…と言うしかなかった。

 

翌日、先輩は朝五時に起きて、色々と朝の仕事をしていた。私は七時に起きて化粧をして、身なりを整えて、先輩に頼まれた昼食の準備をしたり、飼っているヤギに野菜の葉っぱをあげに行ったり、野菜を買いに来た人と話したり、のんびりと人の到着を待った。

その日、結局集まるのは三十人弱。現役の大学生がそのうち十人弱。すごいな〜と思いつつ、人の到着を待っていたら、一番乗りの人は、前の日記に書いた夏の内緒の遊びをする先輩だった。

 

玄関から、先輩と一緒に到着した車から誰が降りてくるのだろうと見ていたら、その大好きな先輩だったので、大喜びして私は先輩の名前を叫んだ。田舎にこだまする声のでかさに家主の先輩が「声でっか!」と笑っていたが、それくらい私は嬉しかった。

そこから続々と後輩や先輩がやってきて、子ども連れの人たちもいて、久しぶりの後輩は「丸い先輩!?丸い先輩!?」と私を見て興奮する子もいて、誰が来るかを内緒にしていた先輩のサプライズが効いていた。

 

いろんな人たちがいた。

仕事も職種も様々で、住んでいるところもばらばらで、でも、みんなが何かを頑張ったりしていることがよくわかって、元気が出た。

私の同期は二人が参加で、でも、なんだかんだ全員が何をしているか把握していたり、ばらばらで個々に会ったりしていることもわかって、なんだか安心した。一番のOBの人は、市役所勤めの人で、私たちが卒業する時にこう言っていた。

「就活したこともないし、三十歳で初めて仕事にちゃんと就いた。なんとでもなるし、やりたいことをやってれば、やりたい仕事ができるようになるから、勇気を持って生きてくれ」

なんとなく、私はずっとそれを覚えていて、勇気を持ってというのはあながち間違いじゃなかったというか、マジ勇気貰ってたと改めて伝えたら「第二の人生の始まりや」とあっけらかんとしたもので、変わらない人だと、それにも思わず笑みがこぼれた。

 

 

私が会いたかった先輩は、なぜかお土産と一緒に買ってきたマンガを持って来ていた。

それが宝石の国の最新刊であることを確認していた私は、「宝石の国、読んでましたね…」と宴会最中に声をかけると、私の近況について聞いてくれた。

聞けば、その先輩はやはりコミティア常連一般客だったそうで、私がコミティアにも出たりしていることを伝えると、Twitterとかあんの?と聞かれて、や!まだそんな!!と私の悪い癖が出た。自己評価低。肯定感の低さ。わかってもらえるかな、とか、その他もろもろ。

「事後報告はナシやで」それは約束した。

そうして、色々漫画や本の話をしていたら、ぼんやりと、自分は同性だけじゃなくて、異性の人にもやっぱり読んでもらえるような、そういうものがつくりたいな、と思った。漠然とした意識だったけど、こうして話してみないとわからないものもあるんだな、とじんわりと心に熱が広がった感じがした。

 

帰りは、実家が同じ方向のずっとお世話になっている先輩の車に乗って帰った。大学院を卒業した後も、同じ職場で働いていて、私の信頼のおけるとても優しい大好きな人だ。

夜も遅く、眠気が来ないよう帰り道ずっと何かを話していたのだが、急に助手席の前にある棚を開けてみて!と言われて開いたら、アクスタが三つほど収まっていた。めちゃくちゃ笑った。

先輩がハマっていて、紹介されたコンテンツのビバレンというアイドルもののアクスタである。大切に同乗させてもらえている、彼女の推し達。よかったねえ〜と撫でた。

 

その日、実家に帰ると肉体労働もしたからか腰と肩がバキバキで、たくさんの人にも会ったおかげと、笑いすぎで頰の筋肉が痛かった。

よい疲労感。足場を踏み固めるような確認。

 

実家の片付けは、家族のどいつもこいつもが「これはまだ使う」「これはまだ着てる」とコンマリ先生が聞いたら静かに額に青筋を浮かべそうなセリフばかりを口にされ、全員しばきまわしたろかと思いつつ、ひとまず自分の荷物を整理。

 

終わっていないですけどね!本当に大丈夫なのかな、作業スペース確保できる?と怖くなるほどの進まなさ具合だったが、どうにかしてやるぞ…と気合いが逆に入った。

 

生きるって大変だな。そうは思っているけれど、自分のペースが少しずつ戻ってきているのを感じる。慌てることなく、ゆっくりゆっくり。急いては事をなんとやら。

そんな週末を終えて、一人暮らしの家路についている

 

先輩と後輩の関係の話

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今週末、久しぶりに関西に帰ってのサークルの同窓会のようなものがある。

 

大学生の頃、面白い先輩とお菓子につられて入ったサークルである。地域密着型のサークルで、大きなイベントは年に二回、特に夏のイベントが大きなものだった。

その当時から、先輩たちというのはOB、OGとして多く参加していて卒業してしまった先輩たちも、その時期になるとサークルの活動に参加するような、そういう場所だった。

大人がたくさんいるよ〜と思っていたが、自分も今週末にはその一人として見られるのか、と思って、変なの〜となっている。

 

今になって思うこととして、私は美術大学に通っていたわけだが、かなり特殊な場所であったことをこの年齢になって痛感する。それは別に嫌な感じではなくて、ただ、割合として見た時に少数派であったということで、その世界しか知らないのだ、と実感する感じに近い。

もちろん座学もあった。

けれど、必要最低限であったし、大学院にいたっては履修登録はあるものの、必須の科目は担当教員の授業を取れば、あとは作品を提出すれば終わり、みたいな、ほぼ一日はフリーの時間で、制作時間に当てられることが当たり前だった。

 

不思議なもので、高校を卒業して大学に入ると、妙に息がしやすかった。

自分が好きなものや興味のあるもの、そういった趣味嗜好、はたまた「作る」という共通項を前提として集まっている人たちの中にいると、そればかり考えていても誰にも責められることもなくて、自分が自分にテメェ…しっかりしろや…と思うことはあっても、何かしらの安心感があったものだ。

そして集まっている人たちは多種多様であった。

 

サークルの思い出は大変だった記憶と、しょうもないことをたくさんしたなという記憶がすごいある。

まだ校内で火器厳禁!!と厳しく言われることも少なく、許可なくバーベキューや七輪で食べ物を焼いて食べたり、大学構内で水風船を大量に作りそれで鬼ごっこをしたり、(これに関しては総務課からそのあと注意された)お酒を出していけない学祭で、ひっそりとお酒を出すお店を出展したり、とにかく楽しいこともめいっぱいした。

 

サークルでは、とあるお祭りに夏に参加するのが恒例行事で、これが大変なのだが(肉体労働なので、今もし参加することになったら私は死ぬと思う)、お祭りの初日に私はいつもみんなに内緒でやっていたことがあった。

 

夜のお祭りのそれは、開始の時間までに、地域の点検に回る。

地域の人に挨拶をしたり、お店の人に声をかけたり。そういった段取りの最中、大体必ず初日に来てくれる先輩がいた。私はそのOBの先輩と同級生の助手さんにお世話になっており、親しいこともあって、その先輩になんとなく親近感があって好きだった。細々とした声で喋るオタクの先輩(若くしてハゲていた)は、どこか兄に似ていたので、安心感があった。一方的で失礼な安心感である。

私はその先輩が点検時の初日に来る、その日。

お祭りが始まるまでの時間に、必ずあるおねだりをこっそりとしていた。

 

それは、車で来ている先輩に甘いものを食べに連れて行ってもらうというものだ。

 

点検に行ってきまーすと、意気揚々と先輩の車に乗り込み、やる気満々ですよ!みたいな顔をしてこっそり一人、もしくはたまたまそこらへんにいた後輩や同期を連れて冷たいものを食べに行くのだ。

 

知らない間に、年に一回しか会わないその先輩との何となく始まった恒例行事。

初めての時は、先輩が「このままなんかアイスでも食べに行く?」と学生が分散されて乗る車の中で提案されたことがきっかけだった。

え、行く!仲の良くなった先輩に大体タメ口になってしまう私は、先輩の誘いを断るはずもなかった。アイス!奢りだ!

 

美味しいジェラート屋さんに連れて行ってくれた。その時はたまたま同期が同じ車に乗っていて、先輩は「ダブルはダメです。シングルなら好きなものを頼んでいい」と、とても正直な申告をしてくれて、イェ〜イとアイスを店内で食べて、集合場所に遅れて帰った。「みんなには内緒やで」ウース!私と友人はいい返事をしたはず。

 

夏の暑い日、甘いもの、冷たいものを食べたくて学生は差し入れをとにかく楽しみにしている。大人たちの差し入れを今か今かと待ち望んでいるハイエナなのである。

翌年も、その先輩が来て私はひそっと近付いて「先輩、今日も暑くないですか?」と声を掛けた。去年の味を占めている。最悪の後輩である。先輩は「今年はコンビニかなー」と言って、また適当な人間を見繕ってコンビニで、キンキンに冷えたフローズンを奢ってもらった。

 

学生最後の年は、よく覚えている。

その年は、後輩二人といつものように地域の南側から点検してきま〜すと、向かうのにその先輩を混ぜた。私がめちゃくちゃにせがんだからだ。

私の大学の後輩ではないのだけれど、そのお祭りに例年参加している地域の男の子がいて、その子は私が甘いものをたかる先輩と仲が良かったので、私、後輩、男の子、先輩の四人編成となった。

 

私と先輩の頭の中には、「点検」「挨拶回り」の目的は抜け落ちている。その日は、お祭りが始まるまであまり時間がなくて、途中のお茶屋さんに目をつけていた。

「先輩、今年はここどうすか」

「割引効きそうやな」

お祭りに協力しているのだ。案の定、割引してもらえた。後輩二人は「これ大丈夫です!?」

「バレたらやばくない?」と言い、外を駆けていくサークルの他のメンバーを見つけるたびに体を小さくした。

そして、パフェが一人一つずつ、お腹の中へと消えて行った。先輩は眼鏡に薄いヒゲ、そして若いけれど頭の頭皮がその…ツルツルとしていたので、パフェとのアンバランスさがおもしろくて、私は写真を撮りまくった。失礼な後輩である。

門外不出にしろよ、と注意されながら、背徳感を感じて食べるパフェは最高だった。

 

結局、割引があるとは言え、四人分となると金額はバカにならない。一応私はそのメンバーの中では先輩に次いで年長者だったので、先輩よりは少ないけれどお金を支払った。

 

年に一度会うか、会わないかのその人。

でも、多分お互いに年に一回くらいしか会わないから、その日のことをやけに覚えているのかもしれない。約束したわけじゃないが、顔を見合わせると「甘くて冷たいものを食べに行こう」という合図がなんとなく、通じ合っていた。

今週末、その人はきっとその集まりには来ない、のだと思う。でも、もし来ていたら、またひっそり何か奢ってもらおうかな。などと、後輩からしてみれば大先輩になった私は、その人にとってはまだ後輩なのだから〜〜と開き直って想像している。

 

こうして、先輩に甘えることを知った私は後輩、もしくは年下、そういった人とご飯に行く、お茶をする、となると、会う回数があまり少ない人に関しては奢ります!という気持ちができている。歳が離れていても、友達認定をしていると割り勘でオナシャス!となるが、自分がしてもらって嬉しかったことを、ちゃんと人にできる人でありたいと思っている。

 

しかし、この前それに失敗した。

カードでいけるでしょ!と後輩の展示を見に行ったついでに、お茶しているところにお邪魔をしたら、カードが使えなくて、あまつ現金も足らず、「ごめん、お金貸してください……」と、先輩面目丸潰れ案件である。恥。

彼女たちは会いに来てくれただけでうれしいですよ!と言ってくれたし、その気持ちもすごくわかるのだけれど、財布の中身はきちんと確認しておくべきだなと思った一件であった。

 

先輩、後輩。不思議な関係の話である。

 

 

髪を切ることの話

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なだらかな日々が続いている。

最後に美容院に行ったのは先月の頭のこと。今までずっとワンレングスだったので、思い切って前髪作ってみようかな?と思い、幼馴染ののくまちゃんにおすすめの髪型送ってーと連絡をして、髪を切りに行った。

 

小中高の頃、私には髪型の選択肢がなかった。

というのも、私の肌が弱いこともあり、母が肌に髪が擦れることで肌荒れを気にして、好きな髪型にすることをあまり許してくれなかった。まあ、美容院ってそもそもお金もかかるし、小学生の頃は母に髪を切ってもらうことが常であった。

しかし、素人。出来上がる髪型なんてしれたもので、私は常に前髪ぱっつんおかっぱ頭になり、初めての美容院も結局母のオーダーが通されて、いつもとなんら変わりのない、ぱっつん、おかっぱに悔しさのあまり家に帰って号泣したことを覚えている。

 

髪を染める。それ自体にも母は反対で、高校卒業の時に染めたれー!と思った時も、勝手に自分でせえ!という感じで、むらむらの髪の毛ができあがった。けれど、私は満足した。自由だなと思えて。

大学生に入ると、美術大学であることもあって、色んな髪色、髪型をしている人がいて、先輩の通う美容院を紹介してもらった。

そこの美容師さんは常にピンク色の髪色をしていて、好きなんだよね〜と、覚えてもらいやすいしね、と、芋っこ丸出しの私に色んな髪型や髪色を提案してくれた。

好きにさせてくれるから助かる〜!と言われて、おかっぱから解き放たれた開放感で私は結構色々な髪型に挑戦することになる。

 

美容院への通い方は人それぞれだと思う。

安いクーポンのために毎回お店を変えるという友人もいるし、他にも毎回同じだと逆に気を遣って話をしなくちゃいけないという人もいる。

私は、どちらかというと、かかりつけの病院と同じで、自分の趣味嗜好をわかってくれている方が気が楽で、どこに引っ越しても同じ場所に通い続けるタイプである。

 

大学生の時にお世話になったその美容師さんとは、休みの日に飲みに行ったりする間柄で、今もインスタグラムで繋がっている。たまに髪を切ったことをストーリーなどに上げると、いいね!をくれたりする。不思議な関係だ。

 

そのあと、土地を移動した私は、また友人からお店を紹介してもらって、かかりつけ美容師を見つけることになる。

前回までは同姓の美容師さんだったのだが、この時は異性で、うまく話せるもんかね…と思いつつ、いざ通い始めると、その人は常にローなテンションなのだが、美容師としての仕事に誇りを持っていて、かつ職人、のような気質の人だった。

その美容院への予約は電話でしていたのだが、大体電話をかけると「あ、丸いさん?いついつ空いてる。カラーとカットでいい?ん。じゃあ待ってます」と、一分もかからないうちに電話が毎回終わる。高速…と電話を切るたびに思っていた。

 

私の心配などどこへやら。

お互いにマンガ好きなこともあり、髪を切っている最中に家の方からドラゴンボールの画集を持ってきてくれて、それを見ながら髪を切ったり、ハンターハンターのキャラ誰が好き?という話で盛り上がったり、職人気質のその人の、美容師としてのこだわりの話を聞いたり。

カットやカラーで気に入らない部分があると、「お金取らないからやり直しさせて」や、「もうちょっとこうしたいから、してもいい?」など、これぐらいから美容師さんに全てお任せ、お好きにどうぞ態勢の私は、どうぞどうぞという感じだった。

 

私は自分の容姿にそれなりのコンプレックスがあるのだが、もし唯一好きなところを無理やり挙げろと言われたら、頭の形と答える。

それも、この美容師のお兄さんが褒めてくれたからだ。「頭、ちいせえ〜マジで形綺麗。触るの怖いくらい。あと髪質もいい。何しても大丈夫。時間はかかるけど」そんなに!?プロの人にしかわからないそういうことってあるんだな。頭の形だけは自信を持っていこう、と決意した瞬間だった。

台湾に旅行に行くことがあったのだが、その時どうしても髪を切ってから台湾に行きたくて、関西から飛び立つ予定だったため、地元に帰るついでに髪を切った。

飛び込みの美容院はやけにシャレオツでビビり散らかしたのだが、隣に例の幼馴染のくまちゃんがいてくれたのでなんとか乗り越えた。

 

それはさておき、すみません、他所で切ります…と思いながら、その後いつもの美容院に行くと、すぐにバレた。名探偵コナン

「こうじゃない、こうじゃないんだよな〜!丸いさんの頭とか髪型の癖って、こういう、これじゃないんだよな〜!!」

頭を触られながら、二度と他店などに行くまいと心に誓った瞬間であった。

 

そしてまた、土地を移動して今。

近所の良さげな美容院を探していて、はたと目に止まったのは美容師さんが一人でやっている可愛いお店だった。お客さんも一人。一対一になる。初めてのパターンだ。人見知りする方でもないし、長く通えるならその方が良い。遠くに髪を切りに行くのは嫌だった。

二人のお子さんがいる美容師のお姉さんは、明るく、ユニークな人で髪を切っている間、何でもない話をずっとしていた。覚えていることも覚えていないこともあったりするけれど、毎日誰かの話を聞いている人たちだ。すごいなーと思う。

大体こんな感じにしたいです。イメージを伝えて、あとはいつものように毎回好きにしてください、と言う。最初こそはお姉さんは戸惑っていたけれど、だんだん慣れてきて「ここ、こうしてもいいです?」と提案をしてくれるようになった。楽しく好きにしてください。

実際、自分のやってみたい髪型と似合う髪型は違う。頭の形とか、癖とか。色素とか。そう思うと、プロの人に似合うものを選んでもらうのが一番よくて、もちろん自分の理想はあるけれど、そこに近づく形でうまくやってくれるのは間違いない。なので、私は好きにしてください、と大体言ってしまうのだ。

 

一度だけ、お子さんに会った。

自宅の一階がお店になっているそこの、庭でパートナーの人と二人の姉妹が遊んでいた。

まだ下のお子さんは親のしている仕事が何かを理解していないようで、「何してたのー!?」と聞かれて笑ってしまった。髪を切ってもらったんだよ〜と返すと、不思議そうな顔をして、あのねー!と別の話が始まった。お母さんはねー、すごい仕事してるよ。いつか知った時、どういうことを思うのだろう、ぼんやりとそんなことを思った。

そして先月、多分最後だなと思いつつ、近況報告をして実家に帰るんですという話をしたり、今までにない髪型になることを大丈夫かなあと心配したりしながら髪を切ってもらった。

 

できましたよ!と、美容院お決まりの二面の鏡で見せてもらった自分、思わず拍手をして、大丈夫だった〜と気に入った。スタンプカードがちょうどいっぱいになって、でも次はあるかどうかはわからない、と予約の話になった。

きっと、私たちが選ぶ側であるかぎり、こうしてこの人たちは人と出会ったり、別れたりを繰り返しているんだろう。なんとなく、お姉さんのあっけらかんとしたその様子に、寂しさを覚えた。

最後に、彼女は私の顔を見て、「いいですね!似合ってます!私、こういうことがしたくて美容師やってるんです」と笑っていた。

そうだなあ、そうなんだろうな。

 

 

見慣れない髪型。

私にとって多分、毎回少しだけ美容師さんを困らせてしまう「好きにしてください」という言葉は、美容院で髪を切ることが手っ取り早い「私の見たことのない私」に出会える期待から出てくる言葉なのだと思う。

 

いつも同じ髪型でもいい。同じ髪色でもいい。それもそれで、いい。でも、私は髪を切ることが好きで、その理由はきっと、これに尽きるのだ。髪を切ったあと、新しい自分を誰かに見て欲しくなる。それは、大体の小さな変身が成功した証拠で、私はどこにでも行けるような気持ちになる。

青っぽい色だった髪の色は抜け落ちた。次はどんな色にしようか、どんな髪型にしようか。どんな人に出会えるだろうか。

 

この歳になって、一番明るい髪色の私は、次の髪を切る日を楽しみにしている。

夢と現実の境界にいる話

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先日、友人と遊びに出た。本当はその二日前に会う約束をしていたのだけれど、色々が流れて三日に会おうとなった。

私には特に決めた目的はなくて、ぼんやりとお香が欲しいなというくらいで、数ヶ月ぶりに会った友人は美容院終わりだった。

 

他愛もない話をしつつ、地図をちゃんと見ることのできない私(わりと最初から地図を見ることを諦めている)は、彼女に「地図を見てください」と何度もお願いして、あと耳があんまり良くはないので、彼女の話す声が聞こえなくて、「ん?」とか「何て言いました?」とか、最終的にもう身体を勢いよく揺らすことで声が聞こえないことを知らせる体たらくだった。

美味しいものをたくさん食べたし、飲んだ。可愛いものもたくさん見て、彼女は彼女で目当てのものを買っていて、いい買い物をするなあと隣で眺めていた。

 

途中、チャイ専門店に向かう最中、なんかよくわからないけど気分が悪くて、お店で飲み物を飲み始めると落ち着いたのだが、正直に「めちゃくちゃさっきまで気分が悪かったです」と言ったら、「なんで黙ってるんですか!?」と言われて、いやまあなんとなく…と思った。でも、大丈夫!?と大袈裟に心配されるよりも、気持ちよく笑ってくれる方が気持ちいいのが正直なところだ。

グーグルアプリは便利なんですよ、と新しい文明の利器の指導をしてもらった。彼女は私の知らないものをたくさん知っている。すごいな〜。常に、ちゃんと自分の好きなものにアンテナを立てている人。そういう人と話すのは、安心するし、おもしろい。

家に帰って、彼女がおすすめしてくれたお香を焚いたらめちゃくちゃいい匂いでびっくりした。この匂いの身体になりたい。

 

そうして、人と話したり会ったりする日々の狭間で、私は、夢と現実の間を行き来している。これは実際に睡眠の夢でもあるし、ぼうっとした意識の中でもある。

最近、一日動くと一日動けない、みたいな反動の日々を過ごしている。それから、よく眠る。よく眠るとはかなり良い言い方で、ただの過眠である。薬が切れて、途中覚醒することもしばしば。そうすると、細切れの夢を山のように見る。短編映画を何本も観ている感じで、起きると頭が混乱してぼーっとしたもやのかかったような、不思議な心地でマットレスに座り込んでしばらく動くことができない。

中には、かなりリアルな夢も混ざり込んでいて、料理を作ったような気がしたり、買い物をしたような気がしていて、冷蔵庫や棚を開けて、ないな…と確認することもしばしば。人から連絡が来ている気がして、だいたいそれは私の期待した展開で進んでいて、アプリを開いてそんなわけないか、と落ち込んだりもする。

私の世界は曖昧になる。曜日も曖昧で、日付はわかっていることが多いけれど、今日は何曜日なのだろう、と思う。そして一週間の時間の経過の早さを感じて、身体と心が少しずつ世界からずれていることを知る。

とはいえ、12月の半ばくらいには関東を引き上げるつもりで進めている私は、これが余暇…?と休める時に休むべきだというたくさんの人の言葉を聞きながら、なるべくこっちにいる間に会える人に会うべきなんだろうと、体力ゲージを減らしたり、回復したり、そうして管理をしている。

自分でポケモンセンターにでも通ってる感じ。家で何をする?と悩みつつ、眠りに沈んで、じっとしている時、これはポケモンボックスに預けられたポケモン…。と思う。レベルは特に上がらないけど、いつかに備えているつもり。

実家に帰ったら、たぶん自然と太ることもできるはずだし、目下の目標は健康な身体。

 

 

そして、今日はまた人に会いに行く。

決まっていることは、彼女の行きたい喫茶店に行くこと。それから、私が広い公園でピクニックをしたいとリクエストをした。

今日超寒い日だよね?と二人で笑って、レジャーシートを買うことを忘れたけど、なんとかなるやろ、とメッセージを送り合っている。

 

ハンターハンターに取り憑かれた話

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写真はこの前行った喫茶店がすごいおしゃれだったのに、レジの上に両面宿儺のフィギュアと、棚にクソデカい漏瑚のクッション、私も持っている夏油のフィギュアがあった、その両面宿儺の空箱である。せめて空箱はバックヤードに片付けな……。

 

今回の日記だけれど、もう書いているとおりだ。ついに明日…?明日ハンターハンターの最新刊が出るわけだが、ついこの間からアプリで5巻まで無料で読めますよ〜の案内があり、私は元々ハンターハンターの読者だったので、久々に読みますか。となった。

 

元々このマンガを買い始めたのは、私の母である。夕方5時半。アニメが始まり、すぐに母はマンガを買い始めた。このアニメは初期のアニメで、リメイク版前のものである。

案の定母、兄、私はハンターハンターにハマるわけである。しかし、ご存知の通り休載や、えげつない描写がそれなりに増え始め、私はキメラアント編の序盤(ポックルとかカイトがなんやかんやするあたり)で心が折れた。家族はハンターハンターを古本屋に売った。これは、今思えばかなりの失敗であると今になって思う。

 

そして、5巻まで無料を読み終わると、天空闘技場編、それかヨークシン編、G.I編が刷り込まれている私は5巻まで読んでそこで終われるはずがなかった。

キリがいいところ…いいところまでね…ほら…こんぐらいでしょ…と気付いたら全巻の電子購入が終了していた。一片の悔いなし。お金を残しておきたいという私の心、ハンターハンターの面白さの前に砕け散る。

休載が多かったこともそうなのだが、一気に知らない部分、点だった部分が繋がるとあまりの面白さにひっくり返りそうになった。一つの話と話の間の繋ぎの部分が唐突なようでいて、全て線になっているのだ。こりゃ……途中で読み終われないわけで……。

 

最近色んなマンガを読み始めたという先輩のパートナーは、一番面白いマンガをハンターハンターだと言っていたらしい。最新刊3冊分が本棚に入っており、不思議に思ったら私と同じパターンで実家にあるマンガを全て売り払われたのだという。人の意見を聞いてから売れ!!!!!!!!!

 

そういうわけで、すっかりハンターハンターに取り憑かれてしまった私はここ数日ずっとハンターハンターに頭が毒されている。

人との会話での状況の喩えに「ハンター試験みたいな…」と口を滑らしたり、自分が念を使えたら何系なんだろうと考えたり、MBTI診断ではゴンなのだが、念能力の調べられる(これも診断系)をやったら、自分は絶対強化系か放出系の自信があって、憧れてるのは具現化系なんだけど、絶対そうだ〜と思っていたら案の定強化系のゴンだった。私、やっぱりゴンなんだ……。

 

最近、色んなマンガを読んだりしていて名作と呼ばれるけれど、自分は読んだことがないなというものを読むことに楽しさを見出している。

不朽の名作とはよく言ったもので、良いものは不思議とずっと良いものなのだ。そこに自分のツボがハマるかどうかはともかく、脱帽!という気持ちがすごいある。おもしろいものは積極的に取り込んでいきたい。

あと、やっぱりマンガでもなんでも、そこの後ろにいる作者を感じる。この人はこういうことをこういう風に考えているんだな〜みたいな。こういうものが滲むものって、塩梅があるていど大切なんだと思うんだけど、書いてる人、作っている人は人間なんだなと感じられることって、大切なことだなと思う。

借り物でもなくて、キャラクターが話してるように見えて、きちんとそのキャラを扱ったうえで、話しておきたいこと、起きること。

マンガって面白いな〜。

 

早くハンターハンターの新刊が読みたいです。あと何時間で読めるなー!

 

優しい日の話

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赤い靴、ピンクのストライプのワンピースシャツ。

待ち合わせは14時。駅で私を出迎えてくれたその人は、華やかな色でそこに立っていた。

 

彼女は私の大学時代の先輩にあたる人だ。私は仲の良い先輩のことを名前にちゃんづけで呼んで、敬語もなしに話してしまう。そういうことを許してくれる、私より先に関東にやってきていた先輩。

彼女はとは会うなり柔らかくハグをして、少しだけ背が高い私の後頭部に手を伸ばして「いい髪色やなあ」と頭を撫でてくれた。先輩は三人姉妹の長女で、親戚のような、そういう雰囲気がずっと先輩にはある。頭に触れられるのに、傾けた頭を正して、私と彼女は街を散歩しながら、全てを任せきりにして話をした。

 

茶店を巡ることが好きな先輩は、迷うことなく歩く。

今回は、私が行きたいイベントにもう一人の大学時代の同期を誘っていて、連絡を同じタイミングで寄越してくれた先輩に、一緒にどうですか?と声をかけた。仕事もあるけれど、快諾してくれたことに感謝。私だけが自由に動き回れる。

話を聞いてもらえるのは、嬉しいし、ありがたい。そして申し訳なさもあったりして、自分のことでいっぱいいっぱいだよなあ、と反省したりもする。

 

最近漫画を色々読み始めたという先輩に、ちょうど昨日からハンターハンターに取り憑かれている私は、ハンターハンターの話をしたり、おすすめの漫画の話をしたり(彼女のパートナーがハンターハンターを好きなことが判明して、話したい気持ちになった)、彼女の最近読んだ漫画の話を聞いたりもした。

大学の同期であるギャルも仕事をちょっとしてから合流ということで、喫茶店、カフェをはしごする途中、名前の話になった。私の本名を当たり前に知っている先輩は、私の肩を軽く掴んで笑った。「〇〇って名前、そんな感じじゃないよなあ」私もそう思っている。同意しつつ、でも、それだから呼びたくなるとけらけらと先輩は笑い、ギャルと合流した。

 

全員が関西人。

東京に出てきた田舎者の私は、江東区(こうとうく)と書かれた文字を「えとうく!」と横断歩道の信号を待つ間叫んだ。東京界隈に住む先輩たちである二人から「こうとうくや」と一斉にツッコミが入り、「今ここにいる人の記憶消せませんか?」とまたハンターハンター仕込みの念能力で記憶を抜き取る想像をした私は言った。握ったそれぞれのコーヒーを飲みながら、しばらく公園のベンチでお茶。あれやこれや、これからのこと、今までのこと。数ヶ月の間に起こった出来事が会話の中で行き交った。

 

イベント会場は時間帯による入場制限があり、それでもごった返す人の中で、ありとあらゆる情報が目に飛び込んでくる。目的は、大学の同期が出展していること。でも、財布の紐を硬くしたい私たちは、「頭おかしくなる」「この辺のエリアやばい」「あ〜気が狂う」と言いながらフロアを練り歩いた。

久々に会った同期の彼女は、相変わらずの姿でそこにいて、ちょっと肩が持ち上がっていた。ギャルが腕を掴んだ瞬間、「服、薄っ」と言っており、そこか?と思いつつ、しばらく話をした。彼女がまだ何かを作っていること。それが見れて嬉しかったし、彼女は「インスタグラムになんかすごいいいポスターのシルクの写真上げてませんでした?」と言ってくれた。よく覚えてるなあ。自分の作った作品の話は照れくさいので、さらっと流したけれど、作ってたよ、今も何か作ってる。そう話して、そのフロアをぐるりと回りながら三人で「何か作りたくなるね」と話した。

心地よい疲れがあって、でも服を買いに出て、服を買うつもりだったけど結局何がいいのかわからないみたいな、そういう感じにも似たものがあって、最終的に入口地点に近いところで薄いZINEとステッカーを買った。後悔なし!

 

先輩はすっかり眠くなっていて、おなかすいたー、と眠いーの狭間で、ふんにゃりとゆっくりと帰り道を一緒に進んだ。

もうすぐ駅に着こうか。そのくらいで、今後のために色々を節約している赤い靴を履いた先輩が「まだ楽しいから帰りたくない。寂しい。デニーズに行こう」と言ってくれた。私とギャルに異論はなし。デニーズでご飯を食べて、また懐かしい話、あれやこれやを話して、お店を出よう!となった。

 

渋谷はハロウィン。

今日はすごいことになってるらしいよと話しながら、駅へと向かった。大変だなーと言いながら、なんでもない会話のラリーがテンポよく続いた。駅は、先輩とギャルが同じ方向。私は違う路線。またね、元気でね。関西に帰るまでにまた、と手を振って別れた。

 

先輩の綺麗な赤い靴、ギャルの品のいい豹柄のストール。私は黄緑のスウェットトレーナー。

イベント会場で会った、ほんの少し大人になって柔らかさが増したような、同期。

 

てんでばらばらで、でもこうして結びついている人。大切にすべきものは、きっとこういうものなのだ。疲れたね、よく寝れそう。ギャルは「一周回って悪夢見そう」などと言っており、そんなことあるか?と先輩と笑った。

 

優しい日、優しい人。

自分のために、自分が人を誘って何かへと足を向けられたことに安堵して、私は家に着いた。忘れたくないな、この日を。日記を書いてるんだし、書き留めておくべき。いい日が続いているから、次はまた何か困ったことが起きそうだな、とかそんなことを考えてしまう。

 

でも、起きたら起きたでいいや。私は布団で大の字になっている。