やわらかい

日々、いろいろ、ほそぼそ

今日も誰かの誕生日の話

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数日前、留学から帰って来た友人、そして前の職場から仲良くしている友人。この三人で、おかえり会と早めのお誕生日会をした。

会場は前の職場から仲良くしていた友人がしてくれた。前の日の夜というか、朝まで話していたので、大丈夫かなと思ったら案の定、みたいなことが起きて、もう一人の友人と笑ってお店で彼女を待った。

 

私たちの付き合いは、とても長いというものではない。(もしかすると、人によると長いということもある。そんなに経ったかあとは、思うけれど)

でもいつからか、日常のこと、好きなものの話、敬語がなくなって、お互いに何を話しても、何をしていても、安心感のある人たちになった、と、私は思っている。

 

そもそもは、私と前の職場からの友人が同じ誕生日で、誕生日会をしようという話になった。なら、もう一人の友人がちょうど帰ってくるからおかえり会も兼ねよう。そうして決まって、私と前の職場からの友人はプレゼントについて悩み始めた。

帰ってくる彼女には、好きな作家がいて、そのプレゼントを贈るのはどうだろうと提案した。グッズの取り扱いをしているところをたまたま発見して、朝食を食べることが好きな彼女にぴったりの絵のハンカチ。可愛いグラス。

これでいくぞ!と決まり、注文をしたらそのお店からメールが届いた。店主一人で切り盛りしているそのお店。店主がコロナになっていた。

そんなことある〜?!と思ったけれど、コロナになってしまったので、すぐに商品が欲しいのであれば注文を取り消していただくことも可能です、とのこと。いやいや、大丈夫!笑いながらそれを共有して、届くまでの日数は余裕があるからいいよね、とゆっくり準備してくださいと返事をした。

コロナになったことがある私は、その大変さも重々わかっている。

届いた商品は、明るい色で、私を出迎えた。頭の中でこのプレゼントを贈る彼女に似合う、爽やかで、柔らかくて、気持ちの良い色。喜んでくれるといいな、早く渡してェ〜と一人で笑っていた。

 

そして、もう一人の友人へのプレゼント。

何がいいかな、と悩んだ。私はぬいぐるみを人に贈るのがとても好きなのだけれど、彼女には一度贈ったことがあるし、何がいいんだろう、と悩みつつ好きなお店のインスタグラムを徘徊。

そして、新商品で目に入った、コインパース。青地に白い鳩が大きく刺繍された、小さながま口。なんとなく、これかな?と思った。

けれど、決定打にかけて、しばらくまたネットの海を徘徊。グラス、器、アクセサリー。自分のために買うものを選ぶことは苦手だけれど、こうして人のために何かを選ぶことは好きなのだ。

結局、私は白い鳩の前に帰ってきた。

じっと携帯越しに睨み合う。そして、商品名を確認したら「SHONANOKA」と書いてあった。

初七日。白い鳩。やっぱりこれだな!と思った。

その友人は、小さくて、動物でいうと小さなハムスターをいつも私は連想する。でも、彼女の話し声はきゅるきゅるとした鳥のさえずりにも似ていて、柔らかさがふくふくとした鳥にも似ている。

初七日。魂が運ばれていく初めての七日間。そこを導く生き物がいるとするなら、こういう白い鳩がいい。どこか優しくて、でも何かを見極めるための瞳を持っていて、そういう生き物。彼女のようだな、と思ったのだ。

 

そしておかえり会、早めのお誕生日会は開かれた。ケーキをお店に用意してもらって、三個と聞いていた私たちは、三個ってなんだろうね?と言っていて、「一個か三個か聞かれて」と、予約をしてくれた彼女が言った。「それってなに?大きいの一つ?」色々聞いたけれど、そういうことではないらしい。よくわからないね、でも四つでくるかもしれないよ、と笑っていたら、ケーキが二つ、スコーン?が二つ乗って、デコレーションされたお皿が現れた。

「これは実質四つ!」

めちゃくちゃだった。何を話しても面白くなってしまうハイな状態でもあったが、まさか本当にそうだとはね、と好きなようにケーキを食べてお店を後にした。

 

次の喫茶店で、互いにプレゼントを渡して、私たちは留学帰りの彼女からお土産をもらった。ダサいご当地マグネット、香りのするジェル、そしてイギリスで彼女が大好きなスーパーマーケットの紅茶。

香りのするジェルはバーボン。なぜ!?と思いつつ、私たちは三人ともオタクであり、ただ私は名探偵コナンのバーボンにさほど思い入れはないのだが、バーボンの香りを渡してきたことに笑った。ちなみに、帰って嗅いでみたが「バーボン…?」だった。紅茶はとても美味しくて、香りがとてもとても良くて、スハ〜と幸せな気持ちになる。彼女のセンスと、ちょっとした茶目っけが、私はとても好きだ。再確認。

 

そして、互いの誕生日プレゼント。

彼女がくれたのは、奇遇にも私の好きな作家の一輪挿しだった。

私の家には花瓶がない。日記にも書いたことがある。花瓶がなくて、自分のために花を買うことができない私。それを知っていて、花瓶の一輪挿しが私の家にやって来た。言いようもない、嬉しさと、驚き。自分では可愛くても絶対に買わないものが手元にやってきた。

 

そしてその日は、そのあと本屋に行って互いのおすすめのあれこれを話して、買って、帰路についた。幸せな一日だった。この日のために生きていたのかな?そういうことを、幸せな日を終える度に思う。そんな日になった。

 

 

そして、今日。

朝一番、幼馴染ののくまちゃんから恒例の変顔写真が送られて来ていた。今年も新しい機能を駆使して撮影されていて、朝からベッドで大笑いした。写真はいつも全部保存と、スクショを撮る。母からのメッセージもあった。柔らかい包むような言葉と、ほんの少しの私の情けなさ。けれど、嬉しかった。

 

今日が私の誕生日だ。最近は起きるのも一苦労で、頭の中でやることを反芻して、あちこちに行ったり電話をしたり、確認をしたり。

でも、私の家には私しかいない。私が私を祝わずしてどうしますか!と、やるべきことを一つ終わらせて街に出た。

数週間前、髪を切った。いつもワンレングスという前髪を揃えての髪型にしていた私は久々に前髪を作ってみたのだが、これが存外楽で、化粧せずとも眼鏡とマスクをつければ外に出ることが可能になった。いや〜身軽。ありがたいわね、と思いつつ、ケーキを買いに行った。

 

近所のケーキ屋さんは休みで、食べたかったな…と思うラインナップだったが、致し方なし。一駅移動して、散歩しながら別のケーキ屋さんに行った。ケーキは二つ買うと決めていた。おやつのケーキと、食後のケーキ。季節のタルトとオペラを買った。チョコのケーキだと、私はザッハトルテかオペラが好きなのだ。名前の音がいい。

 

私の家には、花瓶がある。

今買わずしていつ?と思った私は、意を決して花屋に足を向けた。店内には私が一人きりで、しばらくお店の中をウロウロして、どうしよう…と悩んだ。バラ?バラはなんかなあ。ピンクの花も綺麗。でもなんか、違うことない?オレンジ色のマリーゴールドが目に止まる。オレンジ色は、もともと好きな色である。

 

しばらく悩んで、店員さんに声をかけた。

「あの〜」と言った後、自分の誕生日なんですけど、一輪挿しに花をいけたくて!とか、言えるか?!んなモン!??!嘘をつくことにした。

「友人が誕生日で、一輪挿しに向いている花ってありますか?」

大嘘。マジで取りようによっては悲しい大嘘。でも言えないよ、誕生日とかいらなかったね!?は言ってから気がついた。大馬鹿者め……。

店員さんはまずバラを紹介してくれて、それから秋の色のオレンジ色のものが人気です、と言った。やっぱりそうかあ、と思った私はオレンジ色の鮮やかなマリーゴールドを選んだ。

一輪挿しの大きさを聞かれて、花を切ってもらって、そうしたら「おリボンは付けられますか?」と聞かれてしまった。お、おリボン……。嘘が私の首をキュ、と軽く絞める。

でも自分のためのお祝いですし。お願いした。

 

ラッピングを待ってる間、花言葉を調べることにした。色によって違うのはそうだが、マリーゴールド自体の持つ花言葉は「嫉妬」「絶望」「悲嘆」血の気が引いた。縁起でもねえ!!一人で花屋でケーキを落とすところだった。

オレンジ、オレンジですから…調べると、オレンジ色は「真心」と「予言」。うん、大丈夫大丈夫…。大丈夫!イイ!ネガポジな花らしい。まあ、それも自分にはよく合っている。

オレンジ色のマリーゴールドは別名、「太陽の花嫁」とも言われているらしい。イイ、イイよ…。一連の流れが、なぜか笑えて、良かった。

 

帰宅して、私はさっそく花を一輪挿しに生けてみることにした。

思っていたよりも浅い、一輪挿し。いや、本当にこれが浅くって!それに声を出して笑い、水入んね〜!と四苦八苦し、花の重さに負けて、方向が良い方向を向かないオレンジ色に、「なんじゃこりゃ」と面白おかしくなってしまった。

 

 

家に花瓶がなかった。

だから花を買う理由はなかった。この花も萎れてしまう。でも、ちょっぴり不恰好で、うまくいかなくて、部屋に咲いたオレンジ色は、私にすごくすごくお似合いだと思った。

今日も誰かの誕生日。

私の誕生日は、去年とは違う不思議で楽しい流れの中で、行き着いた今日になった。