やわらかい

日々、いろいろ、ほそぼそ

アイドルの話

 

今は好きなグループの新譜が出たら、見る、聞く、という状態になっているのだが、私はとてもアイドルという職業の人たちが好きだ。

そもそも、発端は母がSMAPのことが大好きで、幼少期からいわゆるジャニーズ事務所さんにはとてもお世話になっている。幼稚園の頃の私は堂本光一くんと結婚したい!と常々言っていたらしい。今は普通に好きだが、結婚…とまではいかないな…と謎の心持ちだが、キンキさんと言えばファンのあしらい方が有名なお二人なので、光一くんも「誰がそんなもんできると思ってんの?」だろうな、と思う。

 

高校生の時、東方神起にハマった。そりゃもうなんかすごい勢いで。五人だった時のことで、追いかけているうちに三人のグループ脱退が決まり、最後の最後であった歌謡番組の収録で生の姿を見て最後になった。

それからは灰。何を好きになったらいいんだ…何を信じたら…そう思っているうちに二次元のオタクに戻り、またしばらく三次元を離れることになった。

 

そして、2015年。私はまた、アイドルにハマってしまう。

各方面で言っているし、好きな音楽の話でも書いたのだが、私はV6というグループに再会を果たす。制作もろもろで心が大変だった。そんな深夜のある日、20周年を迎えた六人が対談をするという番組がたまたまテレビでやっていた。

ぼんやりとそれを見ていたら、彼らが人気の全盛期だったといえるだろうバラエティをやっていた時のイメージと、まるで違う、大人になったその人たちがテレビに映っていた。

特に、その後完全なる人生の推しとなる森田さんの姿が印象に残った。

 

バラエティを見ていた時、森田さんはどちらかというとやんちゃで、もちろんその性格は端々で垣間見えることもあるのだが、見ていてドキドキハラハラする怖さがあった。好き勝手しているように見える、やんちゃなお兄さん。私はそんな森田さんが苦手だった。

でも、その番組で話す森田さんは、とても静かで、言葉を一つ一つ選ぶように、ゆっくりと話していた。こんな人だったっけ?彼が年齢を重ねたこともあるのだろうけれど、あまりの自分とのイメージの違いに、驚いてしまった。そして、妙に心が惹かれて仕方がなかった。

そして、メドレーを歌う曲はどれも私が知っている歌で、なぜか涙が出た。アイドルってこんなに人のこと応援してくれるんだっけ?すごい仕事だ。笑って。その歌詞が出てくる歌を聴いて、自分が受験期にこの曲が入ったアルバムをたくさん聴いていたのを思い出していた。

これを、懐かしさ補正、と私は呼んでいる。

懐かしさ補正だったのかもしれない。けれど、その瞬間、私には心を動かされる何かがあって、救われた、と思ったのだ。

 

何かにハマるオタクというのは、爆速である。

全てが秒で補完されていく。えげつないスポンジだ。色々調べたり、漁り始めたら、恐ろしいところだった。V6というジャンル。何より、私は音楽を好きでないと、アーティストに興味を持つことができないのだけれど、ライブ映像を見て、あまりの曲の幅広さに驚いて、そこも好きになっていく一因となった。

V6は実家みたいなものになった。

なんというか、いつ帰っても大丈夫な場所。彼らが何をしていても、どんな活動をしていても、六人が集まっている姿を見ると、不安になることなんて一つもなかった。むしろ、こういう大人になりたいなと思わせるような安心感と、それでいて、家族よりもきっと長く一緒にいるメンバーといると、子どものようにはしゃぐ人たち。見ているだけで、楽しくなる気持ち。いつでもそこにあって、いてくれる。そういう安心感だ。

 

そこから、私はKPOPに渡っていく。ここではいい思い出も、辛い思い出もたくさんある。なんというか、日本よりシビアな韓国の業界というのは、良くも悪くもアイドルという象徴の消費の回転がすごい世界だと思う。毎日入ってくる情報。毎日、目に入るリアルタイムの写真、ライブ、追いかけるだけで体のエネルギーがごっそりと持っていかれて、でもそれが新鮮で楽しかった。私も消費している側なのだなと思って、それがどうすることもできなくて、悲しいことも多かった。

そして、それに彼らも苦悩していたりする。もう耐えられない、と思った時にはV6に戻った。実家なので、帰ると安心する…とあたたかいお茶を飲んでいる気分になる。

でも、いずれにしても、私は彼らの存在に救われた、と本当に思うのだ。

 

大学院の頃、好きなものの話をしていて、どうしてアイドルを好きなのか、と教授に尋ねられた。どうして。見た目もそうだし、歌もそうだし、踊りもそうだし、魅力は上げ出すとキリがない。でも、この好きだと思う感覚は、別にアイドルに限った話ではない。誰かや何かに救われたと思うこと。心が楽になったこと。楽しかったこと。それが、私にとってはアイドルだったというだけのことで。

 

ご存知の方もいると思うけれど、V6は昨年解散することになった。

そのニュースを知った瞬間は、多分思考回路があまり働いてなかったのだと思う。ただ、人からそう尋ねられた時、涙が出た。こんなに好きなものになっていたのか、と思った時、終わりって来るんだな、と漠然とした終わりを実感した。

彼らは生身の人間だ。アニメやゲームと違って、生身で、人生があって、私みたいに生活がある。決められた道筋だけを進むことも、誰かに指示されることも、本当は許されることではない。でも、終わるんだ、と思った。

 

最後のコンサートは、最終日に現地に行くことは叶わなかったけれど、チケットを当てることができた。とってもいいので見て欲しい、と一緒にV6を好きになってくれた人たち二人と、私とでコンサートに行った。私は運が良くて、彼らを好きになってからのコンサートをきちんと生で見ることができている。生きているんだなあ、と思う。

好きな人たちは、とても楽しそうに歌って、踊っていた。しんみりとする瞬間ももちろんあったけど、でも、なんて綺麗な幕引きなんだろうと思った。懐かしい曲もたくさんしてくれたけれど、最新のアルバムもとても良くて、解散しようかという年のコンサートに、こんなに色んなものが見れるなんて、と胸がいっぱいになった。この人たちのことを好きになって本当に良かったと思えて、幸せだと心の底から思うような。

 

ちなみに、この最後のライブはAmazon primeでも配信中なので、とっても見てほしい。ジャニーズだからとか、おじさんじゃない?とかは抜きにして、音楽が好きな人たちにとてもおすすめしたいグループなので…良かったらね…ぜひ…

 

アイドルの光を浴びると、私はいつもちゃんと生きようと思う。

この人たちに恥じない自分でいたい。こんな人たちみたいな、大人になりたい。これはV6を見ていると思うことだけれど、人を幸せにする仕事をしているって、すごいなと思うのだ。

頑張っているアイドルを応援していると、時々胸が張り裂けそうになる。もうそんな頑張らないでくれ!とか、こんなところ見てらんね〜!とか、そういう消費をしている自分に嫌気がさしたりして、でも、本当に楽しそうにしている姿を見ると、良かったなあ、と思う。この忙しない気持ちを行き来して、私は彼らの光を浴びている。

好きな人たちが、好きなように生きていたらいいなと、思う。

アイドルを好きでいると、割り切れないことも起きたりするし、そんな綺麗事を!と思う人もきっといるのだろう。ただ、私は彼らが人間であることを知っているし、私の望んだ終わりでない、終わりを迎えてしまった人たちも知っている。

 

だからこそ、全てのアイドルよ、健やかであれ。心の底からそう思っている。

誰かのために生きても、君は君だし、笑っていてほしい。あ〜でっかい感情!と思う。今はここが最高に推しっす!というグループは特に思いつかないんだけど。

でもまたいつか、浴びに行きたいと思う。アイドルの光。

 

いくつになっても、ずっと好きだろうなと思うもののひとつだ。