やわらかい

日々、いろいろ、ほそぼそ

歯の話


歯の話です。

この歯の話なのだが、私にとって大きな出来事かつ笑い話でもあるので、あの時の辛さ、悔しさ、悲しさを綴っておこうと今回の日記のテーマに選んだ。私は地獄の所業を忘れない。たとえそれが、自業自得だとしても…!!!


一昨年のことである。

私は人生で虫歯というものになったことがなかった。歯医者を訪れたのは、幼少期の検診で、顎が小さいためこのままだと永久歯が生え揃うのに害が出ます。という謎の診断の元、わけもわからず歯を一気に二本抜いて生えるスペースを確保するという治療を受けたのみだった。

これも、母から特に説明があるわけではなく、行くよ!と連れられて行った。わけもわからないまま麻酔を打たれ、歯を削って二本抜かれた。何が起きていたのか謎の事件である。


以来、私は虫歯になったことがなかった。

つまり、虫歯が一体どういう状態になるのかを知らないということである。


ある二次創作イベントの日、前入りをしたその日から何かがおかしかった。奥歯が痛い。親知らずは生えていたので、親知らずが何か悪さをしているのだろうと思っていた。

とりあえず晩御飯を食べよう!ファミレスに友人と入り、水を飲んだ。その瞬間、壮絶な痛み。変な顔をしていたら、私の歯の不調を事前に伝えていた友人が「え?痛い?」と聞いてきた。

痛い。キーンと染みる痛さだった。

彼女は「それ、虫歯じゃない?」と言った。その時はまだいやいや…と思っていた、正直。


ホテルに戻って、痛みが続くそれに私は不安を覚えて歯を磨く際に口の中に指を突っ込んだ。

前提であるが、私は虫歯がどういう状態になるのかを知らない。なぜなら、人生で虫歯になったことないからである。

下の歯に異常は見られない。そして左上の歯を触った時のことだ。

歯が欠けていた。ない…?溶けて…?歯が…欠けている…!??!

ひとまずシャワーを浴びて、冷静になったあと、友人に尋ねた。

「虫歯って…どういう状態になりますか?」

友人は冷静なので、「歯がね〜なんかこう、溶けたみたいに欠けてくっていうか、穴が……」

私の歯正真正銘の虫歯になっていた。

「これ、虫歯ですわ!」

いやそうやろ!!笑いに包まれたが、本当に虫歯になったことなどなかった私は不安に包まれていた。

イベント当日の朝、私がしたことは歯科予約だった。イベントだぜ…?信じらんねーよな…。


そのあと、職場などで私の虫歯の話は話題に上がり、みんなから虫歯の百物語かと思うほど怖い話を聞いた。私は歯医者があまりに久しぶりなことも相まって、初診の日は憂鬱で斜めになった。


結果、歯医者では上の親知らずが虫歯になっていること、それからそこと重なる下の左側の親知らずと隣の奥歯が虫歯になっていることが判明した。親知らずは全て抜くことになり、初めての治療日はクリーニングだけかと思ったらいきなり親知らずではない奥歯の虫歯の治療が始まった。

ちなみに、口の中を自由にすすいで良いのも知らなかった。これどう…すんの…と歯医者に備えられたすすぎ場を呆然と見つめるばかりだった。誰か教えてくれよ。血だらけの口の中を見た歯科助手のお姉さんが、すすいでくださいねと言ってくれて初めてすすいで良いのを知った。恥。


そして虫歯治療であるが、壮絶な痛みである。

別の病気の手術をした時よりも痛かった。痛かったら手を上げてくださいねと言われたが、上げられる余力もなかった。上げたところでなんかなんのかよ!?生理的な涙が出た。

歯に穴が空いたスースーの状態で、担当の先生がなぜか現れた。痛い…閉じてはやく…そう思う患者の私の心も虚しく、先生は私の奥歯の説明を始めた。

「君の奥歯の歯なんだけどね、珍しい神経の形をしています!」

嬉しそうにすな。

先生の説明は、私の神経が変な形をしているので(なんちゃらかんちゃらドンという神経らしい)図解をしながら、虫歯治療がかなり難しいかもしれなくて、だめなら大きい病院ね!という話だった。

図解もいい、説明ももういい、穴が痛い。閉じてくれ…祈る私の気持ちなどどこ吹く風なのか、先生は「この神経ね!今までの歯医者人生で二症例目!」

いや、だから知らん!!!!!!!!!

帰ってからまた泣いた。ちなみにこの隣の親知らずを抜くのも大変ですと言われた。壮絶、歯医者。歯医者がこの世の病院で一番嫌いになった。


親知らずであるが、左右上下をわけて抜くことになった。

最初に抜いたのはその問題の親知らずである。歯茎を切開し、バリバリと歯が割れていく音を聞くこと一時間弱。時折、担当してくれた先生が「やべ!」などと申しており、思ったことは心の中で頼むと思った。やべーのかよちくしょう………歯はボロボロだった。虫歯だったんだ…と思ったと同時に、縫われていたので食事の注意等々を受けて、帰宅した。また泣いた。

左側はしばらく縫われた糸で引っ張られているような感覚が抜けず、食べることが好きな私はうどんで生活をしのいだ。ウィダーとうどん。


あんな辛い思いをもう一度…?次の抜歯に気を構えて行ったら、上下が十五分ほどで抜き終わった。先生は「綺麗!」と自画自賛していた。てめー、本当に許さねえからな。

縫うこともその時はなかった。つまり、一回目の抜歯がかなり大変だったということである。


その後もしばらく虫歯治療が続き、私は虫歯の患部は取り除かれていた状態だというのに、治療の椅子に座るだけで歯が痛くなるようになった。悲しきパブロフの犬

歯の大切さを知った一事件であった。


引っ越すまではクリーニングに定期的に行ったりはしていたのだが、引っ越ししてから歯医者に行っていない。絶対に行った方がいい。いいのだが、足踏みをしている。虫歯らしき気配は何もないが、絶対にまた何か起きる予感がしているのだ。

今回添付している画像は、初めて親知らずを抜いた時に最後に見た景色である。トムとジェリーの映像が常に流れていたのだが、それが私の恐怖心をさらに誘っていた。私はジェリーにはなれない。やり返す方法がない。だって患者だから…。


今現在、私の住んでいるマンションは一階が歯医者である。

いつか、いつか行くんで…と思いつつ、私は歯医者の横を毎日通り過ぎている。さっさと行け。