やわらかい

日々、いろいろ、ほそぼそ

可愛い人の話


職場復帰する前から、私の働いている会社っていい会社だよなと思っていたのだけれど、復帰してもいい会社だなと再び働き始めて思っている。

自分でもなんだけど、仕事は割と真面目にやっていると思う。そういうところで生まれてきた信頼感のようなものもあって、色んな対処をしてもらえている。上司も同じ部署の人も、とにかくあたたかく提案をしてくれる。


私の働いている部署は、年齢の近い人が多い。大体私より少し下か、少し上か、同年代の人がほとんどで、お休みが終わった話で書いたパイセンは一つ下だけれど、お互いに話しやすいように話している。


定時終業より、少し長めに働くシフトで働いているのだけれど、パイセンは今日は残業で同じ時間に帰ることになった。

私より仕事の多いパイセンは、資料作りをしたり何かと大変そうで、でも、そんな資料を「丸ちゃんこれどう思う?見てくれや」と、私に見せてくる。私でいいんか。と思いつつ、ここはこうしたら?とか、いいんじゃない、と私が答えると、彼女の中でもオッケー!になるらしい。いいんか、ほんまにそれで。

この、パイセンだけれど、一緒に働き始めて一年が経った。そうしてそばで彼女を見ていて、私が思うのは彼女がとても可愛い人だということだ。


転職して初出勤した時は、挨拶をしたら割とローなテンションで、落ち着いている人だなーと思った。実際彼女はすごく真面目でしっかりしていて、仕事中は忙しそうだし難しい顔をしていることも多い。

話すようになったきっかけは、お互いが同じジャンルを経てきたオタクであったことが判明してからのことだった。動物のお医者さんの話が通じた時と,テニミュの話が通じた時は魂が震えた。

人見知りだと本人は話していて、人付き合いが苦手で、新しい人が入るたびに悩んだり、私いけるかな…とか言う。ダメだったら任せるねと言われることもあり、私はそういうことを気にしないので、はーいという感じ。

前の職場でも、私の働いている場所のリーダーになる人が同じ誕生日だったのだけれど、彼女も同じ誕生日だ。不思議なもんだなと思っている。


お互いに色んな話をしている。ちょっと色々あって、他の人より一緒に働く時間が長かったのだ。地獄の繁忙期。昨年の八月、おそろしいほど二人で残業をした。パイセンは、丸ちゃんがおらんかったらやめてた。と言うほどで、本当にあの時はお互いによく頑張ったよね…と思うほどである。

仕事を一人で抱え込もうとするので、手伝ったり、人のことを相談されたり、そうこうしているうちに、仕事が終わると一緒にご飯を食べに行くようになった。

終業後のパイセンは、定時内中よりよく笑うし、よく話す。人だから、ぽつぽつと心の中の難しく処理のできないことを話してくれたり、私はそれを聞くだけで、何もできなかったりするのだけれど、こう思うよ、と伝えて駅に着くと、今日もありがとうと必ず言ってくれる。優しい人だな、とその度に思って、私もありがとー!と自転車に乗って別れる。


ご飯を食べに行く時は、お互いにお腹空いたな。ということを話していると、突然決まることが大半だ。でも、大体パイセンが「飯行こうや」と言って、その粗雑な言い方にちょっとした彼女の照れみたいなものを感じる。なんか、可愛いなあと思う。

本人は自分のことを可愛げのない人間だと言うけれど、そうやって誘ってくれる時の表情が私はとても好きなのだ。


お互いの誕生日に予算を決めてプレゼント交換をした。私はぬいぐるみ職人なので、赤ちゃんパンダのぬいぐるみをあげた。彼女は赤ちゃんみたいになることがあるのと、パンダコパンダのコパンダに似ているから、うっすらピンクの毛並みのパンダのぬぐるみだ。

パイセンはそれをちゃんと家に飾ってくれているらしい。大好きなジョジョの仗助くんのフィギュアと一緒に。そこでいいんか?そうは思ったものの、さりげなく報告してくれて、教えてくれることが嬉しかった。


休日出勤の日、仕事終わりにウィンドウショッピングをすることになり、ふらふらしていたら、私がお土産で渡したハンカチを得意げに出してきたこともあった。「今日は君にもらったハンカチを持ってるからね」そうやって、言ってしまうところが可愛い。私はにっこり笑顔になった。お返しに私もハンカチをもらった。私はこっそり使っている。お互いに夢の国に行ったお土産である。


私と彼女は笑いのツボが多分似ているところがあって、静かな部署で二人のくだらない話と笑い声が響くこともあった。大体パイセンはボケで、私がツッコミになる。そういうときは、もう箸が転がってもおもしろいので、一通り終わると「はー、疲れた」となる。


可愛げがないなんてこと、ないよ。

私はいつもそう思う。私はパイセンが楽しそうに笑ったり、キャキャ!と喜んでいたり、しょうもないことを言ったり、ちょっと心がめげていたり、表情がとても豊かで、すぐに顔に出るのを嫌がっているけど、本当に子どもみたいで可愛いなと思うのだ。

可愛い人って、容姿や色んなものでもそう言える人もいるけど、私はなぜか、可愛い人と思うと、彼女の姿を思い浮かべる。


私と彼女は職場でセット扱いで、多くの人にパイセンの相棒と呼ばれている。仲の良い総務のおばさまに、パイセンもきっと喜んでるよと言われたけれど、彼女はそういうことを口にしない人なので、どうなんだろうなあ、と思っている。


今日は、久しぶりの二人での帰り道だった。

休職をする前は、私の体調のこともあって残業を禁じられてから二人で帰ることは少なくなっていた。

色んな話をして、駅が近くなってきた時にパイセンが「腹減ったなあ」と言った。これは、私たちの間では晩御飯食べてくか?の合図なのだけれど、私が早めの晩御飯を食べるシフトになっているので、食べに行こうか。にはならなかった。

そのあと、早めに食べてお腹空かない!?とパイセンが言って、減るよ、とかなんとか答えながら、ほんの少しだけ寂しかった。


そして今日もありがとう、といつものように彼女は言って、いい週末を、と答えて私は自転車に跨った。なにも変わらない、なにも聞かない、でも、そうあってくれることがありがたいし、やっぱり優しいし、今日も可愛かったなあと思う。


来週、また出勤したら何を話せるのかな。もう少しちゃんと働けるようになったら、遊びに行ったりできたらいいな。そんなことを思いながら帰路に着いた。


今回の添付写真は、去年彼女が私にくれた誕生日プレゼントだ。雑穀米を食べていることを「丁寧な暮らしに憧れてるヤツ」と言われ「言うな、そういうのが一番恥ずいから」というくだりから、雑穀と、とにかく食べることが好きな私に、米やら何やらをくれたものの写真である。